スタートアップ創業者

バーンレート・ランウェイ管理:2026年版スタートアップ向け会計ソフト比較

ModelMonkey2026年6月13日読了約 2 分
ツール適した用途バーンレート追跡ランウェイ予測価格(2026年)
freee会計記帳・税務・確定申告P&Lベースのレポートなし¥3,000〜8,000/月 ※1
マネーフォワード クラウド会計記帳・経理効率化キャッシュフロー計算書なし¥3,000〜5,000/月 ※2
QuickBooks Online記帳(海外投資家対応)P&Lベースのレポートなし¥5,000〜35,000/月 ※3
RunwayFP&Aモデリング実績+予測シナリオ分析約¥22,000/月 ※4
Causal財務モデリング数式ベースドライバーベース約¥7,500/月 ※5
Google Sheets柔軟な自作モデル設計次第設計次第無料

※1 freee公式サイト(2026年6月時点) / ※2 マネーフォワード公式サイト(2026年6月時点) / ※3 QuickBooks Japan公式サイト(2026年6月時点) / ※4 getrunway.com(2026年6月時点、1USD≒155円換算) / ※5 causal.app(2026年6月時点、同換算)


会計レイヤーの選び方

発生主義会計で正確な帳簿を維持し、資金調達時のデューデリジェンスに耐えられる体制が必要なら、実質的な選択肢は3つです。

freee会計は日本のスタートアップにとってデファクトスタンダードです。スタータープラン(¥3,000/月)でP&L・キャッシュフローの基本レポートが利用でき、スタンダードプラン(¥5,000/月)以上では部門別・プロジェクト別のコスト配賦も可能です。バーンレートの「レポート」は日付でフィルタリングしたキャッシュフロー計算書が実態です。実用的ではありますが、整形なしで投資家向け資料にそのまま使える水準ではありません。

マネーフォワード クラウド会計は銀行・クレジットカードとの自動連携が強みで、経理担当者がいるチームに好評です。実績数字の柔軟なエクスポートはfreeeと同等で、制約も同じです。

QuickBooks Onlineは、USベースのVCをはじめ海外投資家とのやり取りが多い場合に検討する価値があります。海外の会計士やFAが使い慣れているという点で優位性がありますが、日本語サポートと国内税務対応はfreee・マネーフォワードに劣ります。

いずれのツールも共通の限界があります。ランウェイは教えてくれません。モデルに食わせるための実績値を提供してくれるだけです。

GMOあおぞらネット銀行やマネーフォワード経費も資金繰りの把握に使えますが、両ツールのランウェイ表示は「現在の残高 ÷ 直近月次支出」という単純計算です。採用計画や売上見込みを織り込めないため、モデルとは別物と割り切って使ってください。


専用モデリングツール:Runway・Causal

Runway(ツール名。スタートアップの「ランウェイ」と同名で紛らわしいですが)は2026年時点でおそらく最も完成度の高いスタートアップ向けFP&Aツールです。月額約¥22,000で、freee・マネーフォワード・QuickBooksと連携して実績値を自動取得し、ドライバーベースのシナリオモデルを構築できます。アウトプットは投資家向けに近いレベルです。

ただし制約もあります。新たに習得すべきツールが増えること、内部ロジックが抽象化されすぎて投資家Q&Aで「なぜこの数字なのか正確にはわからない」という状況が生じること、そして複雑なSAFE条件のモデリングには対応が難しいことです。

Causalはより柔軟性が高く、変数と数式でシナリオを管理できるスプレッドシートに近いアプローチです。月額約¥7,500は合理的ですが、RunwayよりもモデリングのSelf設計に時間がかかります。

どちらのツールも「カスタムなことをしようとした瞬間」に限界が見えます。トークン従量課金型のSaaSプライシング、複数の割引条件が絡むSAFEスタック、2パターンの採用プランによるCACペイバック比較--こういったモデルを組もうとすると、ツールの想定を迂回する作業が増え、最終的に重要なタブの少なくとも1つをGoogle Sheetsで管理することになります。


Google Sheetsで投資家向けランウェイモデルを構築する

MRR 100万〜700万円規模のシード期においては、専用のFP&Aツールは多くの場合不要です。必要なのは、正確な実績を記録する会計ツールと、その実績を取り込むランウェイモデルをGoogle Sheetsで構築することです。以下は今日からシートを開いて組み始められる設計です。


タブ構成:5タブで崩れないモデル

① 前提条件タブ(シート名:Assumptions)

すべての入力値をここに集約します。他のタブはこのタブのセルを参照するだけです。前提が変わったときはここだけ修正すればモデル全体が更新されます。

セル項目入力例
B2現在の手元資金45000000
B4月次新規MRR(基本シナリオ)2000000
B5月次チャーン率0.04
B7人件費合計(月次)5200000
B8固定費(オフィス・SaaS等)800000
B9マーケティング費600000
B11シナリオフラグ(1=弱気、2=基本、3=強気)2

② 実績取込タブ(シート名:Actuals)

freeeまたはマネーフォワードからエクスポートした月次実績を貼り付けるタブです。列構成はシンプルに:A列=月、B列=人件費、C列=マーケティング費、D列=インフラ費、E列=一般管理費、F列=収入(MRR)。このタブは数字を貼るだけで、計算式は入れません。


③ バーンレート計算タブ(シート名:Burn)

列設計:B列=科目名、C列〜N列=4月〜3月(各月)

行設計と実際のセル参照:

1行目:月ラベル
  C1: "4月" D1: "5月" …(以降コピー)

3行目:MRR
  C3: =Assumptions!B4
  D3: =C3*(1-Assumptions!B5)+Assumptions!B4
  ※E3以降はD3をコピー

6行目:人件費
  C6: =Assumptions!B7
  ※D6以降はC6をコピー(採用があれば手動で加算)

7行目:固定費
  C7: =Assumptions!B8

8行目:マーケティング費
  C8: =Assumptions!B9

10行目:純バーン(月次)
  C10: =C6+C7+C8-C3
  ※D10以降はC10をコピー

11行目:手元資金残高
  C11: =Assumptions!B2-C10
  D11: =C11-D10
  ※E11以降はD11をコピー

12行目:ランウェイ(月数)
  C12: =C11/AVERAGE($C10:C10)
  ※D12以降はD12をコピー(累積平均バーンで割る)

実績取込タブに数字が入ったら、C10〜N10の実績月をActualsタブの数値で上書きします。予測月はそのまま前提条件タブの参照を維持します。これで「実績 → 予測」のつなぎ目が自動的に管理されます。


④ シナリオ分析タブ(シート名:Scenarios)

3パターンの前提条件セットを横並びにした感度分析テーブルです。Assumptions!B11のシナリオフラグを1・2・3に切り替えるだけで、Burnタブ全体が更新されます。

変数弱気(フラグ=1)基本(フラグ=2)強気(フラグ=3)
月次新規MRR100万円200万円350万円
チャーン率6%4%2%
エンジニア採用月7月9月12月

AssumptionsタブのB4(月次新規MRR)には、シナリオフラグを読んで自動切替する数式を入れます:

=IF(B11=1, 1000000, IF(B11=2, 2000000, 3500000))

⑤ 投資家サマリータブ(シート名:Dashboard)

上記4タブの計算結果を引用するだけのサマリーシートです。このタブに直接数値を入力しないこと。デッキとモデルの数字が乖離する最大の原因は「デッキに直接数字を打ち込んでしまうこと」にあります。

月次バーン推移・ランウェイ残高・MRR成長グラフもここに置き、Burnタブのセルを参照させます。投資家向けデッキに貼り付ける数字はすべてここから取ってください。


実際にかかる時間の見積もり

上記の設計で初回セットアップに2〜3時間、freee・マネーフォワードからのエクスポートデータを実績取込タブに整形して貼り付けるのに初回1時間程度です。「動くが粗い」状態がその日中に完成するイメージです。

問題は翌月以降です。毎月の取締役会前に実績取込タブを更新する作業--エクスポート・整形・貼り付け・数式確認--は慣れても30〜45分かかります。月次で確実にこなせるなら問題ありませんが、これを一度でもさぼると、デッキの数字が2ヶ月前のままになります。

ModelMonkeyはこのメンテナンス工程を自動化します。Google Sheetsの中で動作し、freeeやマネーフォワードの月次データを指定のセルに自動で流し込みます。一度設定すれば、毎月の実績取込タブが自動更新されます。30〜45分の手作業がゼロになることで、「取締役会の直前にモデルを更新していない」というリスクがなくなります--自信を持ってデッキを提示できるかどうかは、結局モデルが常に最新かどうかに尽きます。


まとめ:2026年の最適スタック

投資家向けのバーンレート・ランウェイ管理には:

  • 記帳:freee会計またはマネーフォワード クラウド会計(月額¥3,000〜5,000)。海外投資家対応が必要ならQuickBooks Online
  • モデリング:上記の5タブ構成でGoogle Sheetsにランウェイモデルを構築。複雑さが増してきたらRunway(約¥22,000/月)を検討
  • アーリーステージでは不要:フルサービス経理代行(月額¥75,000〜)はシリーズA以降の規模感

問題は会計ソフトにあるのではありません。実績値でSheetsモデルを常に最新の状態に保てるかどうか--それが、古い数字で投資家と向き合うか、自信を持ってデッキを提示できるかの分かれ目です。


よくある質問

freee単体でバーンレートとランウェイを管理できますか?

freee単体で「先月の純キャッシュ支出はいくらか」を把握することはできます。ただし「現在のペースで手元資金があと何ヶ月持つか」「採用を前倒しした場合にランウェイはどう変わるか」という問いには答えられません。ランウェイ予測には、freeeから実績値を取り込むモデリングレイヤー(Google SheetsまたはRunway等)が別途必要です。

シード期にはGoogle SheetsとRunwayどちらを選ぶべきですか?

MRR 100万〜700万円のシード期であればGoogle Sheetsで十分です。Runwayは月額約¥22,000の投資に見合う複雑さ--複数事業部、複数通貨、大規模な採用計画--が生じてからで構いません。シード期にRunwayを導入するよりも、Sheetsモデルを丁寧に設計して自動更新の仕組みを整えることに注力したほうが費用対効果は高いです。

投資家向けレポートで報告すべきバーンレートの指標は何ですか?

最低限、グロスバーン(月次総支出)とネットバーン(支出 - 収入)の両方を示してください。VCはネットバーンとランウェイ(月数)を重視しますが、グロスバーンは固定費構造の透明性を示すために有効です。MRRが成長している場合はバーン倍数(ネットバーン ÷ 新規ネットMRR)も合わせて示すと、資本効率の高さを定量的にアピールできます。

バーンレートが想定より急増した場合の対処法は?

まずバーンの内訳を人件費・マーケティング・インフラ・一般管理費に分解し、どのカテゴリが増加しているかを特定してください。次に、増加が「意図した投資(採用計画通りの人件費増など)」なのか「管理外のコスト増(SaaS費用の積み重ねなど)」なのかを区別します。前者はランウェイへの影響を投資家に事前説明できますが、後者は即座に棚卸しが必要です。Assumptionsタブのシナリオフラグを切り替えるだけで、ランウェイへの影響を3パターン即座にシミュレーションできます--これが5タブ構成の設計を徹底する最大の理由です。


価格情報は2026年6月時点の各公式サイト掲載情報をもとにしています。海外ツールの円換算は1USD≒155円を参考値として使用。最新の価格は各公式サイトでご確認ください。

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